2015年11月19日木曜日

【第10回】 硬変化型名詞の格変化

ロシア語の名詞には、主格、属格(生格)、与格、対格、具格(造格)、前置詞格(前置格)と呼ばれる、6 つの格があります。語末の綴りが変化する(格変化)することで、それぞれの格を表します。

以下で見るように、ロシア語では格(語末の綴り)によって名詞の文法上の役割が決まります。この性質があるため、ロシア語は比較的語順に関する制約が少ない言語だと言われています。(例えば、英語では語順によって名詞の文法上の役割が定まるので語順に厳密な制限があります。)

格変化の型(パターン)は名詞の性と、語末が硬音か軟音かによって定まります。基本は硬変化型軟変化型の2通りです。

ロシア語では、文法上、日本語の拗音(きゃきゅきょ、にゃにゅにょ等)に相当する音を『軟音』、それ以外を『硬音』と呼んで区別しています

ここではまず、硬変化型の格変化を行う3つの単語、студент(学生、男性名詞)、окно(窓、中性名詞)、мама(ママ、女性名詞)について、格変化の様子を見てみましょう。


студент(学生、男性名詞)

主格
студент (役割:主語、意味:学生
 
対格
студента (役割:直接目的語、意味:学生

属格(生格)
студента (役割:帰属・属性、意味:学生
 
前置詞格(前置格)
студенте (役割:前置詞の後に名詞が置かれる時この型をとる

与格
студенту (役割:間接目的語、意味:学生

具格(造格)
студентом (役割:道具・手段、意味:学生



окно(窓、中性名詞)

主格
окно (役割:主語、意味:窓
 
対格
окно (役割:直接目的語、意味:窓

属格(生格)
окна (役割:帰属・属性、意味:窓
 
前置詞格(前置格)
окне (役割:前置詞の後に名詞が置かれる時この型をとる

与格
окну (役割:間接目的語、意味:窓

具格(造格)
окном (役割:道具・手段、意味:窓



мама(ママ、女性名詞)

主格
мама (役割:主語、意味:ママ
 
対格
маму (役割:直接目的語、意味:ママ

属格(生格)
мамы (役割:帰属・属性、意味:ママ
 
前置詞格(前置格)
маме (役割:前置詞の後に名詞が置かれる時この型をとる

与格
маме (役割:間接目的語、意味:ママ

具格(造格)
мамой(мамою) (役割:道具・手段、意味:ママ


ロシア語の名詞は、主格の綴りを代表形として用いますので、辞書などの見出しに使われる単語は主格です


例文

格変化した名詞が実際の文の中でどのように使われているか例文で確認しましょう。

Это его сестра. (発音
これが彼の妹だ。(主格)

Я знаю его сестру. (発音
私は彼の妹を知っています。(対格)

машина его сестры. (発音
彼の妹の車(属格(生格))

Она думает о его сестре. (発音
彼女は彼の妹について考えている。(前置詞格(前置格))

Мы помогаем его сестре. (発音
私たちは彼の妹を手伝います。(与格)

Она танцевала с его сестрой.  (発音
彼女は彼の妹と踊りました。(具格(造格))



【第11回】 活動体と不活動体
【第9回】 過去形

2015年11月15日日曜日

【第9回】 過去形

ロシア語の動詞の時制には、過去形、現在形、未来形があります。今回は過去形を覚えましょう。

動詞の不定形(辞書に乗っている代表系)から過去形を作るには、まず不定形語末のтьを取り除きます。そして、主語が単数で、性が男性、中性、女性の場合、それぞれ-л、ло、ла、をтьの代わりにくっつけます。主語が複数の場合は性別の区別がなく、тьの代わりにлиをくっつけます

過去形は状況によって過去進行形の意味「~していた」も表します


過去形の文章を作る際に覚えて置くべき要点は以下の3つです。
  1. 動詞の過去形は主語の数と性に応じた形をとる(上記の赤字参照)。
  2. 主語がкто、чтоの場合、он、 оноと同様、それぞれ3人称単数の男性、3人称単数の中性として扱う。
  3. 過去形になるとアクセント位置が変わる動詞が存在する。アクセント移動に規則はなく個々に覚える必要がある。

以下、читать(読む)、делать(する)、быть(いる)の3つの動詞について過去形の綴を確認しましょう。

単数形(男性)
он (я, ты) читал
он (я, ты) делал
он (я, ты) был

単数形(女性)
она (я, ты) читала
она (я, ты) делала
она (я, ты) была

注: она と主語がа で終わるので、過去形もаで終わると覚えましょう。

単数形(中性)
оно читало
оно делало
оно было

注: оно と主語がоで終わるので、過去形もоで終わると覚えましょう。

複数形(3性とも共通)
они (мы, вы) читали
они (мы, вы) делали
они (мы, вы) были

注: они と主語がиで終わるので、過去形もиで終わると覚えましょう。

過去形の綴りを以下の表にまとめておきます。

主語/不定形
читать
делать
быть
男性
он, я, ты
она, я, ты
оно
читал   
делал
был
女性
читала
делала
была
中性
читало
делало
было
複数形3性とも共通)
они, мы, вы
читали
делали
были
意味
読んでいた, 読んだ
した, していた
いた, あった

例文

以下、例文の中でどのように過去形の動詞がどのように使われているか確認しましょう。

Он делал домашнее задание.(発音
(彼は宿題をしていた。)

Она делала домашнее задание.(発音
(彼女は宿題をしていた。)

Они делали домашнее задание.(発音
(彼らは宿題をしていた。)

Кто делал это домашнее задание?(発音
(誰がこの宿題をしたんだ?)

Что случилось?(発音
(何が起こったのですか?)

Она былá в Париже.(発音
(彼女はパリにいた。)



【第10回】 硬変化型名詞の格変化
【第8回】 形容詞(2)

2015年10月28日水曜日

【第8回】 形容詞(2)

形容詞のうち語幹がг, к, хで終わるものと、語幹がж,ч, ш, щ で終わるものは、第7回で解説した正書法の規則が適用され、第6回(形容詞1)でみた通常の形容詞の語形変化とは若干異なる語形変化を行いますこの場合の語形変化は、通常の形容詞の語形変化に対して、混合変化と呼ばれています。рýсск-ий(ロシアの)と、хорóш-ий(良い)という2つの形容詞について、混合変化の様子を見てみましょう。


単数形、男性形
語幹の最後(г, к, х): рýсск-ий язы́к(言語)
語幹の最後(ж,ч,ш,щ): хорóш-ий язы́к

単数形、女性形
語幹の最後(г, к, х): рýсск-ая газета(新聞)
語幹の最後(ж,ч,ш,щ): хорóш-ая газета

単数形、中性形
語幹の最後(г, к, х): рýсск-ое слово(単語)
語幹の最後(ж,ч,ш,щ): хорóш-ее слово

複数形
語幹の最後(г, к, х): рýсск-ие лю́ди(人々)
語幹の最後(ж,ч,ш,щ): хорóш-ие лю́ди


表にまとめると以下のようになります。

 語幹末尾の綴り
г, к, х
ж,ч,ш,щ
単数形
男性形
рýсск-ий
хорóш-ий
язы́к
女性形
рýсск-ая
хорóш-ая
газета
中性形
рýсск-ое
хорóш-ее
слово
複数形3性同じ
рýсск-ие
хорóш-ие
лю́ди
ロシアの
よい
言語 新聞 単語 人々


第6回で学んだ通常の形容詞の語形変化と比べてみましょう。

硬変化
軟変化
単数形
男性形
нóв-ый
послéдн-ий
дом  /автобус
女性形
нóв-ая
послéдн-яя
студентка
中性形
нóв-ое
послéдн-ее
слово
複数形3性同じ
нóв-ые
послéдн-ие
автобусы/ слова
新しい
最後の
家 バス 女子学生 語

語幹が г, к, хで終わる形容詞は硬変化型に近く、語幹が ж,ч,ш,щで終わるものは軟変化型に似ていることがわかります

<<例文>>

以下の例文の中で、混合変化する形容詞がどのような形で使われているか発音とともに確認しましょう。

Русский язык очень красивый.(発音
(ロシア語はとても美しい。)

Японский язык тоже очень красивый.(発音
(日本語もとても美しい。)

Это новый русский студент. Он очень хороший.(発音
(こちらはロシア人の新入生です.とても優秀です。)

Какая большая собака!(発音
(なんて大きな犬でしょう!)

Спасибо. А какое красивое платье!(発音
(ありがとう,ところでなんて素敵なドレスでしょう!)



【第9回】 過去形
【第7回】 正書法

2015年10月27日火曜日

【第7回】 正書法

ロシア語では、名詞、動詞、形容詞が語形変化しますが、その際、単語の綴りによって、正書法と呼ばれる特別の語形変化ルールが適用される場合があります。正書法とは次のようなルールです。

正書法:
г ,к, х, ж, ч, ш, щ の直後では、次のように語形変化する。
ы ⇒ и
я  ⇒ а
ю ⇒ у

  例えば、студентка(女子学生)という名刺の複数形は末尾が-а(硬音)ですから、通常の名詞の語形変化の規則ではыとなるはずですが(第5回参照)、аの直前にкが来ているので、正書法が適用され、ы ⇒ иの置き換えが行われます。したがって、студенткаの複数形はстуденткиとなります。以下、正書法が適用される例を挙げておきます。


正書法の例(単数形から複数形への変化)

книга  книги (発音
(本)

студентка  студентки (発音
(女学生)

пирожок  пирожки (発音
(ピロシキ)


【第8回】 形容詞(2)
【第6回】 形容詞(1)

2015年10月26日月曜日

【第6回】 形容詞(1)

ロシア語における形容詞の用法には、「主語を説明する述語的用法」と、「より一般に名詞を説明する修飾語的用法」の2つがあります。

どちらの場合でも、形容詞は説明する名詞の性と数に呼応した語形をとります。間違った語形を用いると(例えば、男性名詞を説明するために女性形の形容詞を用いるなど)、文章として意味を成さなくなってしまうので注意が必要です。

形容詞は、説明する名詞の性(男性,女性,中性)と数(単数,複数)に対応する4つの形(語形)をもちます。

単数形の形容詞は、説明する名詞の性別によって男性形、女性形、中性形の3つに変化します。複数形の形容詞は、名詞の性別に関係なく常に同じ形となります

ロシア語の辞書で形容詞を調べるとき、形容詞の見出し語(代表形)として用いられるのは『単数形の男性形』です。


<<形容詞の述語的用法>>
(以下の例文では、形容詞の語幹に相当する部分を黒で、説明する名刺の性と数によって変化する部分を赤字で示しています。)
述語的用法では、形容詞は名詞の後に置かれます

単数形、男性形
Дом новый. (発音
(家は新しい)

単数形、女性形
Машина новая. (発音
(車は新しい)

単数形、中性形
Окно новое. (発音
(窓は新しい)

複数形
Карандаши новые. (発音
(鉛筆[複数形]は新しい)


<<形容詞の修飾語的用法>>
修飾語的用法では、形容詞は名詞の前に置かれます

単数形、男性形
новый дом (発音
(新しい家)

単数形、女性形
новая машина (発音
(新しい車)

単数形、中性形
новое слово (発音
(新しい単語)

複数形
новые слова (発音
(新しい単語[複数形])

硬変化型と軟変化型

ロシア語の形容詞は、語尾の母音の硬軟により2つ型(硬変化型軟変化型)に分類され、それぞれ異なった語形変化を行います。

例えば、новый(新しい)という単語は硬変化型、послéдний(最後の)は軟変化型です。以下にそれぞれの語形変化をまとめておきます。硬変化型のновыйと軟変化型のпослéднийでは、赤字部分が異なることを確認してください。


硬変化
軟変化
単数形
男性形
нóвый
послéдний
дом  /авто́бус
女性形
нóвая
послéдняя
студентка
中性形
нóвое
послéднее
слово
複数形3性同じ
нóвые
послéдние
автобусы/ слова
新しい
最後の
家 バス 女子学生 語




【第7回】 正書法
【第5回】 複数形

2015年8月12日水曜日

【第5回】 複数形

今回は名詞の複数形について学習します。

複数形の原則

ロシア語名詞の複数形は男性名詞と女性名詞の場合、語末が-ы、という形になります。中性名詞の場合には、原則として語末が-аとなります。

ただし、語末が-а(硬音)で終わる単数形の名詞を複数形にするには、-аを-ыで置き換えます。同様に、語末が-я(軟音)で終わる単数形の名詞を複数形にするには、-яを-иで置き換えます。

газета(新聞)とстанция(駅)という2つの単語について、具体例を見てみましょう。

газетаの場合、単数でも複数でも「газет」の部分は共通です。この変化しない共通の部分を「語幹」と呼びます。газетаは語末が-аで終わるので、複数形にするには、-аを-ыで置き換えます。したがって複数形はгазетыとなります。(発音

同種の例: машина → машины 車 (発音


станцияは、語末が-яで終わるので、複数形にするには、-яを-иで置き換えます。したがって複数形は、станцииとなります。(発音

例外、その1

男性名詞の中には、複数形の語尾が規則的な-ыや-иではなく、-а、-я、-ьяなどに変化するものがが若干存在します。幾つか具体例を示します。

дом → дома 「家」 (発音
город → города 「都市」 (発音
друг→ друзья 「友人」 (発音
муж→ мужья 「夫」 (発音
студент → студенты 「学生」 (発音

例外、その2

単数形から複数形に変化すると、アクセント位置が変わる単語や、変化にともなって母音が脱落する場合などの、例外もあります。以下に具体例を示します。

стол→столы 食卓 (発音)     
японец→японцы 日本人 (発音
день→ дни 日 (母音脱落)
головá→гóловы 頭 (発音)  
слóво →словá 単語 (発音)    
мóре →  моря 海 (発音
музей  → музеи 博物館 (発音
дверь → двери ドア (発音
место → места 場所 (発音
поле → поля 草原 (発音

例外、その3

語末が -а, -яで終わる男性名詞は、女性名詞と同じ変化をします。

папа → папы パパ (発音
дядя → дяди おじ (発音



【第6回】 形容詞(1)
【第4回】 存在文

2015年8月2日日曜日

【第4回】 存在文

「◯◯が△△にある(◯◯が△△に存在する)」という意味の文を存在文と呼びます。存在文には、(1)場所を表す副詞を用いる存在文、(2)「前置詞+名詞」の形を用いる存在文、の2通りがあります。今回は、(1)の場所を表す副詞を用いて作る存在文を学習します。

まず場所を表す基本的な3つの副詞を覚えましょう。

здесь  こにこ/ここで
там  そこに/そこで、あそこに/あそこで
дома  家に/家で

「ここに博物館があります」と言いたい時は、「ここに/ここで」 という意味の副詞 Здесьに、「博物館」  を表す名詞 музейを組み合わせて、

Здесь  музей. (発音

と言います。

「あそこに大学があります」と言いたい時は、「そこに/そこで、あそこに/あそこで」 を表す副詞   Тамに、「大学」という名詞 университетを組み合わせて、

Там  университет. (発音

と言い表します。домаについても同様に名詞と組み合わせて存在文を作ることができます。

語順を代えて、Университет  там. (発音) と言ってもほぼ同じ意味の文となります(ニュアンスの違いは生じる可能性があります)。 日本語でも語順を代えて「あそこに大学があります」を、「大学はあそこにあります」と言い換えることができますが、それと同じような感覚です。

場所を表す疑問詞 гдеを用いると、名詞が存在する場所を尋ねることができます。例えば「大学はどこにありますか?」と尋ねたい場合は、「Где университет?」とします。

疑問詞は疑問副詞とも呼ばれ、文法的には副詞の一種なので、他の副詞と同じ要領で名詞と組み合わせて文章を作ることができます。



【第5回】 複数形
【第3回】 人称代名詞

2015年8月1日土曜日

【第3回】 人称代名詞

今回は、ロシア語の人称代名詞を学習しましょう。

<<< 一人称 >>>

一人称の人称代名詞は、「私 = я」、「私達 = мы」の2つです。

<<< 二人称 >>>

二人称の人称代名詞は、「あなた = вы またはты」、「あなたたち = вы」の2つです。二人称で必ず覚えておかなくてはいけないポイントは、「あなた」には2つの言い方があることです。「вы」は、礼儀正しい言い方で、遠慮が必要な大人に対して用いられます。「ты」は、遠慮しなくともよい相手、例えば、家族、親友、子どもなどに対して用いられます複数形で「あなたたち」という場合は、親しさに関係なく常に「вы」を用います。

<<< 三人称 >>>

三人称の人称代名詞は、まず単数が「彼 = он」、「彼女 = она」、「中性の三人称単数 = оно」の3つです。三人称の複数は、性別に関係なく「三人称複数 = они」が用いられます。ロシア語では、人物や動物以外のものについても性別が存在するので、指し示す対象の性別に応じて人称代名詞を使い分ける必要があります。


人称代名詞のまとめ

人称/数
単数形
複数形
1
я
мы
2
ты
вы
     男性
3   女性
     中性
он
они́
она́
оно́



では、例文を見ながら人称代名詞の実際の用法を確認しましょう。

Aさん: Скажите, пожалуйста, кто вы?
発音
Bさん: Я студент.
発音

Aさん: すみませんがどなたでしょうか。
Bさん: 私は学生です。


Aさん: Скажите, пожалуйста, кто вы?
発音
Bさん: Мы студенты.
発音

Aさん: すみませんが皆さんはどなたでしょうか。
Bさん: 私達は学生です。


Aさん: Кто это?
発音
Bさん: Это Володя.
発音
Aさん: А  кто  он?
発音
Bさん: Он студент.
発音

Aさん: あれは誰ですか。
Bさん: あれはヴァロージャです。
Aさん: で、どんな人ですか。
Bさん: 彼は学生です。


Aさん: Кто это?
発音
Bさん: Это Таня.
発音
Aさん: А  кто  она?
発音
Bさん: Она студентка.
発音

Aさん: あれは誰ですか。
Bさん: あれはターニャです。
Aさん: それでどんな人ですか。
Bさん: 彼女は女子大生です。


単語と表現
1. студенты は、студент の複数形(複数形については後の回で詳述します)
2. Скажите, пожалуйста は、 「恐れ入りますが、教えて下さい」という意味で、丁寧に質問する時に前置きとして用いる頻出の定型句です。
3.а は、話題転換や対比の際に用いられる接続詞で、「じゃあ」とか「では」といった意味を持ちます。



【第4回】 存在文
【第2回】 断定文・疑問文・否定文

2015年7月25日土曜日

【第2回】 断定文・疑問文・否定文

ロシア語で、「これ(それ、あれ)は◯◯です」という意味内容を表わす方法は簡単で、◯◯に当たる名詞と「これ、それ、あれ」を表す代名詞「это」をそのまま並べて書くだけです。

英語では、このような場合、代名詞と名詞の間をbe動詞でつなげますが、ロシア語の現在時制では基本的に英語のbe動詞に相当するような単語は用いません

また、ロシア語には英語のaやtheに相当する冠詞も存在しないので、単純に代名詞と名詞を並べるだけで「これ(それ、あれ)は◯◯です」という意味の文が完成します。以下、具体的な例を見て行きましょう。

「これ(それ、あれ)」の意味を表す代名詞「это」は、距離にかかわらず(対象物が遠くても近くても)、自分が指し示したいものを指すときに用います。этоを使って、「これはビザ(査証、виза)です」と言いたいときは、上のルールに従って2つの単語を並べ、「Это виза.」とすれば良い訳です。

では、この文章を疑問文「これはビザですか?」にするはどうすればよいでしょうか。これも簡単で、文末に「?」を付けるだけ、発音的には文末の音調を上げるだけで疑問文となります。以下、実例を見てみましょう。

Aさん: Это виза?
Bさん:  Да, это виза.
発音

Aさん: これはビザですか?
Bさん:  はい、これはビザです。

最初の文(Aさんの部分)が疑問文です。文末に「?」がついているので疑問文であることがわかります。発音のリンクをクリックして発音を聞き、文末の音調が上がっていることを確認して下さい

音調の上がり方について、一つ注意しておきたいのは、基本的には、疑問のポイントとなる単語が本来持つアクセント位置以降の音調が上がるということです。文末の音調を上げるというと、英語学習の経験者は、文末の単語の、最後の音節の音調を上げると考えがちですが、ロシア語の疑問文の場合、キーとなる単語全体の音調が上がる感じになる場合もあるので注意が必要です

もう一つ、別の例を見ておきましょう。

Aさん: Он студент?
Bさん:  Да, он студент.
発音

Aさん: 彼は学生ですか?
Bさん:  はい、彼は学生です。

「он」は、「彼は」という意味の人称代名詞です。「студент」は「学生(男子の学生)」という意味の男性名詞です。上記の疑問文では、「студент」の「е」を境に音調が上がります。発音をよく聞いて確認してください。



次に疑問詞を用いた疑問文を見てみましょう。

Aさん: Кто это?
Bさん:  Это Володя.
発音

Aさん: あれはどなたですか?
Bさん:  あれはヴァロージャです。

「кто」は「誰か」を問うための疑問詞です。ロシア語は、語形の変化によって各単語の文法上の役割を明確化できるため、語順の制限が比較的緩やかな言語です。しかし、それでも「自然な語順」というものが存在します。疑問詞(кто、誰)をетоに繋げて疑問文を作る場合、「疑問詞+ето」が自然な語順です。кто以外にも、「何」を表す疑問詞「что」を使って、「これはなんですか?」と問う場合も、「疑問詞+ето」にしたがって、「Что ето?」という並べるのが自然な語順です

発音についての注意ですが、先に紹介した「代名詞と名詞を並べた文章を疑問文にする場合」と異なり、疑問詞を使った疑問文の発音では、文末の音調は上がりません。これは、疑問詞を使っている場合は、音調を上げなくても疑問文であることが判別できるためです。リンク先の発音を聞いて、文末の音調が上がらないことを確認して下さい。



次に、「これはビザですか?」と問われて、否定する場合の答え方を見てみましょう。

Aさん: Это Виза?
Bさん:  Нет, это не виза.
発音

Aさん: これはビザですか?
Bさん:  いいえ、これはビザではありません。

上述のように、「Это Виза?」は、疑問詞を伴わない疑問文なので、発音するときは文末の音調を上げます。否定文では、否定される語の前に「не」を置きます。неは否定される語と隙間なく連続的に発音されますので最初は聞き取り辛いかもしれません。繰り返し発音を聞いてнеが入る場合の発音の違いを区別できるようにしましょう。



最後に、名詞を2つ続けて「AはBである」という言い方を見てみましょう。このような場合は、2つの名詞をダッシュ「」でつなげます。

Москва ― столица РФ
発音

モスクワはロシア連邦の首都です。

上述のように、ロシア語では、英語のbe動詞の様に、二つの名詞をつなげて「AはBである」と表すことは通常は行いません。ただし、言葉を定義する場合や、慣用的な表現において、例外的に「です、ます」を表す単語「есть」を用いる場合があります。例えば以下のような場合です。

Физика есть наука.
発音

物理学は科学である。


Работа есть работа.
発音

仕事は仕事だ。



【第3回】 人称代名詞
【第1回】 名詞の性

2015年7月11日土曜日

【第1回】 名詞の性

<<名詞のタイプの判別、その1>>

ロシア語の名詞は、文法上、男性名詞女性名詞中性名詞の3つのタイプに分類されます。どの名詞がどのタイプに属するかは、綴りの終端(語末)からおおよそ判断することができます。

  • 男性名詞: 語末が子音で終わる(йも子音であることに注意)。もしくは、ьで終わる。
  • 女性名詞: 語末が、а、я、ьで終わる。
  • 中性名詞: 語末が、о、е、мяで終わる。

яで終わる女性名詞とмяで終わる中性名詞は混同しやすいので注意が必要です。ただし、мяで終わる中性名詞は10個しか存在しませんので、大きな問題とはなりません。

ьで終わる名詞は、男性、女性両方の場合があり、語末からは男性、女性の区別はできませんので個別に覚える必要があります(語末以外にも、単語の意味等から名詞の性別を類推できる場合もあります)。

以下、具体例を見ながら名詞の性別ごとの語末の綴りを確認してみましょう。(括弧内に書かれた日本語の意味から東京外大言語モジュールの発音音声にリンクを貼っていますので、クリックすると発音を聞くことができます。)

男性名詞
студент(男子学生)、трамвай(路面電車)、музей(博物館)、словарь(辞書

女性名詞
студентка(女学生)、Япония(日本)、станция()、новость(ニュース

中性名詞
окно()、море()、поле(野原)、здание(建物)、время(時間


名詞の性別の基本ルールまとめ
(三人称代名詞は第3回で学習します。)
硬音
軟音
対応の三人称代名詞
男性名詞
-子音
-й, -ь
студе́нт  музе́́й  де́нь
он  彼 それ
女性名詞
-я, -ь
студе́нтка Япо́ния  но́вость
она́ 彼女 それ
中性名詞
-е, -мя
окно́  мо́ре  и́мя
оно́ それ

<<名詞のタイプの判別、その2>>

名詞の中には、その1のルールでタイプを判別できないものも存在しますが、その名詞が生物学的な意味で(もしくは慣習として)性別を区別できる場合、文法上の性別も生物学的な(もしくは慣習的な)性別に従います

例えば、папа(パパ)、 мудчина(男性)などは、語末が母音の「а」で終わるので、その1のルールに従うと女性名詞ということになりそうですが、単語本来の持つ意味がハッキリと生物学的に「男性」だと判別できるので、この場合、文法的にも男性名詞として扱われます。

同様の例を幾つか列挙しておきます。

男性名詞
юноша(若者)、дядя(おじさん)、Ваня(ワーニャ、注:男性名の愛称形です)

女性名詞
мадам(マダム)、леди(~夫人



【第2回】 断定文・疑問文・否定文