以下で見るように、ロシア語では格(語末の綴り)によって名詞の文法上の役割が決まります。この性質があるため、ロシア語は比較的語順に関する制約が少ない言語だと言われています。(例えば、英語では語順によって名詞の文法上の役割が定まるので語順に厳密な制限があります。)
格変化の型(パターン)は名詞の性と、語末が硬音か軟音かによって定まります。基本は硬変化型と軟変化型の2通りです。
ロシア語では、文法上、日本語の拗音(きゃきゅきょ、にゃにゅにょ等)に相当する音を『軟音』、それ以外を『硬音』と呼んで区別しています。
ここではまず、硬変化型の格変化を行う3つの単語、студент(学生、男性名詞)、окно(窓、中性名詞)、мама(ママ、女性名詞)について、格変化の様子を見てみましょう。
студент(学生、男性名詞)
主格
студент (役割:主語、意味:学生が)
対格
студента (役割:直接目的語、意味:学生を)
属格(生格)
студента (役割:帰属・属性、意味:学生の)
前置詞格(前置格)
студенте (役割:前置詞の後に名詞が置かれる時この型をとる)
与格
студенту (役割:間接目的語、意味:学生に)
具格(造格)
студентом (役割:道具・手段、意味:学生に)
окно(窓、中性名詞)
主格
окно (役割:主語、意味:窓が)
対格
окно (役割:直接目的語、意味:窓を)
属格(生格)
окна (役割:帰属・属性、意味:窓の)
前置詞格(前置格)
окне (役割:前置詞の後に名詞が置かれる時この型をとる)
与格
окну (役割:間接目的語、意味:窓に)
具格(造格)
окном (役割:道具・手段、意味:窓に)
мама(ママ、女性名詞)
主格
мама (役割:主語、意味:ママが)
対格
маму (役割:直接目的語、意味:ママを)
属格(生格)
мамы (役割:帰属・属性、意味:ママの)
前置詞格(前置格)
маме (役割:前置詞の後に名詞が置かれる時この型をとる)
与格
маме (役割:間接目的語、意味:ママに)
具格(造格)
мамой(мамою) (役割:道具・手段、意味:ママに)
ロシア語の名詞は、主格の綴りを代表形として用いますので、辞書などの見出しに使われる単語は主格です。
例文
格変化した名詞が実際の文の中でどのように使われているか例文で確認しましょう。