2017年4月9日日曜日

【第27回】 合成未来形

ロシア語で未来形の文を作る方法には、大きく分けてбытьを使う方法と、完了体動詞を使う方法の2つがあります。今回は、бытьを使う方法のうち、бытьを動詞の不定形と組み合わせて使う「合成未来形」を紹介します。

бытьという単語は、単体で「有る、存在する」といった意味を表す動詞ですが、бытьの未来形と動詞の不定形(不完了体動詞不定形)を組み合わせることで、未来の意味を表す文を作ることができます。

合成未来形:  「быть の未来形+不完了体動詞不定形

бытьの未来形は主語に応じて人称変化します。人称変化のパターンは、е変化動詞(第I変化動詞)のパターンに従います。е変化動詞の人称変化については、第13回第17回で説明していますので参照してください。以下に、бытьの未来形の人称変化をまとめておきます。黒太字がアクセント位置、赤字が語末です。

 я 
 буду
 мы 
 будем 
 ты 
 будешь 
 вы 
 будете 
 он 
 будет
 они 
 будут 

例えば、читать(読む)という動詞の未来形を作りたいときは、бытьの未来形にчитатьの不定形を組み合わせればよく、人称変化は以下のようになります。

 я
 буду читать
 мы 
 будем читать 
 ты 
 будешь читать  
 вы 
 будете читать 
 он 
 будет читать
 они 
 будут читать 

例文

Завтра я буду читать.(発音
明日、私は読書するでしょう。(明日、私は読書するつもりです。)


【第26回】 所有表現

2017年4月7日金曜日

【第26回】 所有表現

ロシア語では、次のような構文を使って「〇〇を持っている」という意味を表すことができます。この構文を所有表現と呼んでいます。

所有表現:「у属格(生格)+есть主格

「у」は英語のwithに相当する単語なので、英語で「I have a pen」というところを「a pen with me」というような感じで表現するのがロシア語の所有表現です。

所有表現は、「(人)が○○を持っている」という意味で使うことが多いので、人称代名詞の属格を当てはめた形を覚えておくことが大切です。以下、「у +人称代名詞の属格(生格)」の形をまとめておきましょう。

я
у меня
мы
у нас
ты
у тебя
вы
у вас
он/оно  
у него
  они  
у них
она
у неё

「у него」の「го」の発音は、「ゴォ」ではなく例外的に「ボォ」に近い感じの発音になります。

現在時制のесть(有る)は所有表現では不定形のまま用います。過去形を作るときは、主格名詞(所有するもの)に合わせた形の「бытьの過去形」を用います。過去形についてはまた別の機会に詳述します。

所有表現では、「○○を持っている」という所有に焦点を当てた意味以外に、主格名詞の"特徴"に焦点を当てた意味内容を表すこともできます。

例えば、「У нас чёрные глаза.発音)」という文は、「私たちは黒い目を持っている」という意味ではなく、「私達の目は黒い」という、主格名詞の特徴に焦点を当てた意味を表します。

ここで注意しなくてはいけない点は、話し手の関心が存在そのものから主格名詞の数量や特徴に移っているときには「есть」が省略される点です。上記の例文でестьが無いことを確認してください。

一方、単純に、「持っている」という所有の意味で用いる場合は、естьを用います

(例)У меня есть  интересная  книга.(私は面白い本を持っています。[発音])


【第25回】 и変化動詞(2)- 歯音変化
【第27回】 合成未来形

2017年4月2日日曜日

【第25回】 и変化動詞(2)- 歯音変化

第13回で、ロシア語の動詞は、現在形の人称変化のパターンによって、е変化動詞(第Ⅰ変化動詞)とи変化動詞(第Ⅱ変化動詞)の2種類に分類されることを学びました。また、第19回では、и変化動詞現在形の人称変化について学びました。

и変化動詞現在形を人称変化させるには、主語の人称と単数・複数の区別に応じてю, ишь, ит, им, ите, ятを付け足せば良いのでした。 頻出のи変化動詞 говорить(話す)の人称変化をまとめた表を再掲しておきます。

я
 говорю
мы
 говорим
ты
 говоришь 
вы
 говорите
он 
 говорит
они
 говорят

さて、今回はи変化動詞現在形の人称変化の続きとして、歯音変化について学びます。

現在語幹が歯音 с、з、т、д で終わるи変化動詞は、 現在形1人称単数の場合のみ下図のような音の交替が起こります。

 語幹末   Яに続く形のみ 
с
ш
з
ж
т
ч/щ
д
ж
ст
щ

歯音変化では、1人称単数形以外では子音の交代は起こりません。現在語幹がдで終わる頻出のи変化動詞 видеть(見える、見る)の現在人称変化の様子を見てみましょう。赤太字が音の交換(ст → щ)が起こった部分、青字が語末です。

я
вижу
мы
видим
ты
видишь
вы
видите
он
видит
они
видят

例文

Прошу прощения.(発音
お許し下さい!


【第24回】 名詞格変化 ― 中性名詞
【第26回】 所有表現

2017年4月1日土曜日

【第24回】 名詞格変化 ― 中性名詞

過去何回かにわたって名詞の格変化について説明してきましたが、ここでは「中性名詞」に焦点をあててみます。

中性名詞は、主格およびそれと同形の対格以外は男性名詞に準じた格変化をします。硬変化型名詞の окно(窓)、軟変化型名詞の море(海)について格変化を以下の表にまとめておきます。変化する部分(語末)を赤字で、アクセント位置を太字で示します。

主格
 окно 
 море
対格
 окно
 море
属格(生格)
 окна
 моря
 前置詞格(前置格)
 окне
 море
与格
 окну
 морю
具格(造格)
 окном 
 морем 


ここで、それぞれの格になったときの名詞がはたす文法上の役割を再度まとめておきます。

格 (падеж ) 意味 機能
は型 主格 (именительный падеж) ~は・~が 主語・述語
を型 対格 (винительный падеж) ~を 直接目的
の型 属格 (родительный падеж) ~の 所有・所属
前置詞型 前置格 (предложный падеж) 前置詞の意味 前置詞と共に
に型 与格 (дательный падеж) ~に 間接目的
で型 具格 (творительный падеж) ~で・~として 手段・職業

ポイント

中性名詞は、単数形では主格と対格は常に同じ形です

ー ийで終わる男性名詞と同様、иеで終わる中性軟変化名詞の単数前置詞格(前置格)はииとなります。例えば、здание(建物)の前置詞格は здании となります。

例文

Там море.(発音
あそこに海がある。[主格]

Мы видели вдали море.(発音
私達は遠くに海が見えた。[対格]

2017年3月12日日曜日

【第23回】 命令形

今回は動詞の命令形について学びます。ロシア語で命令を表現したいときは、動詞を命令形と呼ばれる形に変化させて用います。

Тыで呼ぶ相手に対する命令形 

まず、Тыで呼ぶ相手に対する命令形の作り方を見てみましょう。(「Тыで呼ぶ相手」については、第3回を参照。)

1.現在語幹が母音で終わる動詞は、現在語幹に йをつける
例)читать(読む)の現在語幹は чита で母音で終わるので命令形は читай となる。
(現在形の人称変化は、читаю、читаешь、… чита-ютなど。ここ参照。)

2.現在語幹が子音で終わる動詞は2つのパターンに別れる。
2-1. 現在語幹が子音で終わりアクセントが語末にある動詞は、現在語幹に и をつける
例)говорить(言う)の現在語幹は говор と子音で終わる。また不定形のアクセント位置はговорить と語末にある(太字がアクセント位置)。したがって、命令形は говори となる。
(現在形の人称変化は、говорю、говоришь、… говорятなど。ここ参照。)

2-2. 現在語幹が子音で終わりアクセントが語幹にある動詞は、現在語幹に ь をつける
例)верить(信じる)の現在語幹は вер と子音で終わる。不定形のアクセント位置はверить と語幹にある(太字がアクセント位置)。したがって、命令形は верь となる。
(現在形の人称変化は、верю、веришь、… верятなど。ここ参照。)

выで呼ぶ相手に対する命令形

выで呼ぶ相手に対する命令形の作り方も、基本的にはТыで呼ぶ相手に対する命令形と同じです。異なるのは、выで呼ぶ相手に対する命令形では、一律、Тыで呼ぶ相手に対する命令形の後に те を付け加えます

例)
Тыで呼ぶ相手に対する命令形: читай(読め)、 говори(言え)、верь(信じろ)
выで呼ぶ相手に対する命令形: читайтеговоритеверьте

その他、注意するべきこと

(1)現在語幹の形は、動詞の現在3人称複数形の ют(е変化動詞の場合)、ят(и変化動詞の場合)語末を取り除いた除いた部分です。(第13回第19回参照)

(2)-авать という綴で不定形が終わる動詞は、不定形の ть を取り除いた形から命令形を作ります。

例えば、давать(与える)の命令形は、まず ть を取り除きます。ть を取り除くと、その前の文字が а と母音なので、先程説明したルールに則って、й をくっつけます。したがって、命令形は давай となります。

давать の人称変化では、даю, даёшь,…のように、да が語幹となります(ここ参照)。

(3)ルールに従わない例外も存在する
 помнить(覚える)は、語幹がпомнなので子音で終わっています。またアクセント位置は、помнитьと語幹にあります。したがって、上記のルールでは、ь をつけるはずですが、この単語に関しては、命令形は、помни となります。この様な例外も存在するので注意が必要です。


例文

извините(発音
すみません
不定形:извинить(許す)

Скажите, пожалуйста.(発音
すみません、教えていただけますか。
不定形:сказать(言う、告げる)


【第22回】 人称代名詞の与格
【第24回】 名詞格変化 ― 中性名詞

2017年3月11日土曜日

【第22回】 人称代名詞の与格

過去数回に渡って、ロシア語では名詞の格によって文法的な役割が示され、名詞が6種類の格に変化することを格変化と呼ぶことを学びました(例えば、第10回参照)。

私(я)、あなた(ты)、彼(он)、それ(оно)、彼女(она)、私達(мы)、あなた・あなたたち(вы)、あの人達(они)、などの人称代名詞も名詞なので格変化します。人称代名詞の格変化は今後徐々に学習していきますが、まず今回は人称代名詞の主格と与格を覚えましょう。

人称代名詞の与格の形は以下のようになります。(2音節以上ある人称代名詞については赤字でアクセント位置を表しています。)

 主格 
 я
 ты
 он / оно 
 она 
 мы 
 вы 
 они 
 与格
 мне 
 тебе 
 ему
 ей
 нам 
 вам 
 им

人称代名詞の与格は、受益者(や被害者)を表すほか、無人称文と呼ばれる文章で意味上の主語となったり、動詞の間接目的語や前置詞に支配されて用いられます。

例文

Мне хорошо.(発音
私は快適だ。


【第21回】 хотетьの変化
【第23回】 命令形

2017年3月4日土曜日

【第21回】 хотетьの変化

欲しい、求める、願う」といった意味で用いられる動詞 хотетьは、非常に例外的な人称変化を行う動詞です。特殊な変化を示すと同時に最頻出単語の一つでもあるхотетьについて、今回はその独特の人称変化をまとめます。 

хотетьは現在形時制において、単数形はе変化動詞(第I変化動詞)で、複数形はи変化型動詞(第II変化動詞)として人称変化しますさらに、特殊なアクセント変化を示すのも特徴です

е変化動詞(第I変化動詞)については、第13回第17回で、и変化型動詞(第II変化動詞)については第19回で基本事項をまとめているので復習しておいてください。

хотетьの人称変化をまとめた表をいかに示します。アクセント位置を赤字で示しています。

不定形:хотеть
я
хочу
мы
хотим
ты 
хочешь
вы
хотите
он
хочет
они 
хотят


上の表で見て取れるように、хотетьは不定形と現在形で子音が入れ替わったり、単数形でアクセントがいったん左に移ったものが複数形で元の位置に戻ったりします。これらの変化は、ロシア語の動詞の中では極めて例外的です。特に、アクセント位置の移動については、хотетьのような移動を示す動詞は他に存在しません。

例文

Я хочу есть.(発音
私はおなかが空いている(私は食べたい)。

Есть хотите?(発音
おなかがすいていますか?(あなたは食べたいですか?)


【第20回】 по-рyсски と рyсский язык
【第22回】 人称代名詞の与格