2015年11月19日木曜日

【第10回】 硬変化型名詞の格変化

ロシア語の名詞には、主格、属格(生格)、与格、対格、具格(造格)、前置詞格(前置格)と呼ばれる、6 つの格があります。語末の綴りが変化する(格変化)することで、それぞれの格を表します。

以下で見るように、ロシア語では格(語末の綴り)によって名詞の文法上の役割が決まります。この性質があるため、ロシア語は比較的語順に関する制約が少ない言語だと言われています。(例えば、英語では語順によって名詞の文法上の役割が定まるので語順に厳密な制限があります。)

格変化の型(パターン)は名詞の性と、語末が硬音か軟音かによって定まります。基本は硬変化型軟変化型の2通りです。

ロシア語では、文法上、日本語の拗音(きゃきゅきょ、にゃにゅにょ等)に相当する音を『軟音』、それ以外を『硬音』と呼んで区別しています

ここではまず、硬変化型の格変化を行う3つの単語、студент(学生、男性名詞)、окно(窓、中性名詞)、мама(ママ、女性名詞)について、格変化の様子を見てみましょう。


студент(学生、男性名詞)

主格
студент (役割:主語、意味:学生
 
対格
студента (役割:直接目的語、意味:学生

属格(生格)
студента (役割:帰属・属性、意味:学生
 
前置詞格(前置格)
студенте (役割:前置詞の後に名詞が置かれる時この型をとる

与格
студенту (役割:間接目的語、意味:学生

具格(造格)
студентом (役割:道具・手段、意味:学生



окно(窓、中性名詞)

主格
окно (役割:主語、意味:窓
 
対格
окно (役割:直接目的語、意味:窓

属格(生格)
окна (役割:帰属・属性、意味:窓
 
前置詞格(前置格)
окне (役割:前置詞の後に名詞が置かれる時この型をとる

与格
окну (役割:間接目的語、意味:窓

具格(造格)
окном (役割:道具・手段、意味:窓



мама(ママ、女性名詞)

主格
мама (役割:主語、意味:ママ
 
対格
маму (役割:直接目的語、意味:ママ

属格(生格)
мамы (役割:帰属・属性、意味:ママ
 
前置詞格(前置格)
маме (役割:前置詞の後に名詞が置かれる時この型をとる

与格
маме (役割:間接目的語、意味:ママ

具格(造格)
мамой(мамою) (役割:道具・手段、意味:ママ


ロシア語の名詞は、主格の綴りを代表形として用いますので、辞書などの見出しに使われる単語は主格です


例文

格変化した名詞が実際の文の中でどのように使われているか例文で確認しましょう。

Это его сестра. (発音
これが彼の妹だ。(主格)

Я знаю его сестру. (発音
私は彼の妹を知っています。(対格)

машина его сестры. (発音
彼の妹の車(属格(生格))

Она думает о его сестре. (発音
彼女は彼の妹について考えている。(前置詞格(前置格))

Мы помогаем его сестре. (発音
私たちは彼の妹を手伝います。(与格)

Она танцевала с его сестрой.  (発音
彼女は彼の妹と踊りました。(具格(造格))



【第11回】 活動体と不活動体
【第9回】 過去形

2015年11月15日日曜日

【第9回】 過去形

ロシア語の動詞の時制には、過去形、現在形、未来形があります。今回は過去形を覚えましょう。

動詞の不定形(辞書に乗っている代表系)から過去形を作るには、まず不定形語末のтьを取り除きます。そして、主語が単数で、性が男性、中性、女性の場合、それぞれ-л、ло、ла、をтьの代わりにくっつけます。主語が複数の場合は性別の区別がなく、тьの代わりにлиをくっつけます

過去形は状況によって過去進行形の意味「~していた」も表します


過去形の文章を作る際に覚えて置くべき要点は以下の3つです。
  1. 動詞の過去形は主語の数と性に応じた形をとる(上記の赤字参照)。
  2. 主語がкто、чтоの場合、он、 оноと同様、それぞれ3人称単数の男性、3人称単数の中性として扱う。
  3. 過去形になるとアクセント位置が変わる動詞が存在する。アクセント移動に規則はなく個々に覚える必要がある。

以下、читать(読む)、делать(する)、быть(いる)の3つの動詞について過去形の綴を確認しましょう。

単数形(男性)
он (я, ты) читал
он (я, ты) делал
он (я, ты) был

単数形(女性)
она (я, ты) читала
она (я, ты) делала
она (я, ты) была

注: она と主語がа で終わるので、過去形もаで終わると覚えましょう。

単数形(中性)
оно читало
оно делало
оно было

注: оно と主語がоで終わるので、過去形もоで終わると覚えましょう。

複数形(3性とも共通)
они (мы, вы) читали
они (мы, вы) делали
они (мы, вы) были

注: они と主語がиで終わるので、過去形もиで終わると覚えましょう。

過去形の綴りを以下の表にまとめておきます。

主語/不定形
читать
делать
быть
男性
он, я, ты
она, я, ты
оно
читал   
делал
был
女性
читала
делала
была
中性
читало
делало
было
複数形3性とも共通)
они, мы, вы
читали
делали
были
意味
読んでいた, 読んだ
した, していた
いた, あった

例文

以下、例文の中でどのように過去形の動詞がどのように使われているか確認しましょう。

Он делал домашнее задание.(発音
(彼は宿題をしていた。)

Она делала домашнее задание.(発音
(彼女は宿題をしていた。)

Они делали домашнее задание.(発音
(彼らは宿題をしていた。)

Кто делал это домашнее задание?(発音
(誰がこの宿題をしたんだ?)

Что случилось?(発音
(何が起こったのですか?)

Она былá в Париже.(発音
(彼女はパリにいた。)



【第10回】 硬変化型名詞の格変化
【第8回】 形容詞(2)