2015年7月25日土曜日

【第2回】 断定文・疑問文・否定文

ロシア語で、「これ(それ、あれ)は◯◯です」という意味内容を表わす方法は簡単で、◯◯に当たる名詞と「これ、それ、あれ」を表す代名詞「это」をそのまま並べて書くだけです。

英語では、このような場合、代名詞と名詞の間をbe動詞でつなげますが、ロシア語の現在時制では基本的に英語のbe動詞に相当するような単語は用いません

また、ロシア語には英語のaやtheに相当する冠詞も存在しないので、単純に代名詞と名詞を並べるだけで「これ(それ、あれ)は◯◯です」という意味の文が完成します。以下、具体的な例を見て行きましょう。

「これ(それ、あれ)」の意味を表す代名詞「это」は、距離にかかわらず(対象物が遠くても近くても)、自分が指し示したいものを指すときに用います。этоを使って、「これはビザ(査証、виза)です」と言いたいときは、上のルールに従って2つの単語を並べ、「Это виза.」とすれば良い訳です。

では、この文章を疑問文「これはビザですか?」にするはどうすればよいでしょうか。これも簡単で、文末に「?」を付けるだけ、発音的には文末の音調を上げるだけで疑問文となります。以下、実例を見てみましょう。

Aさん: Это виза?
Bさん:  Да, это виза.
発音

Aさん: これはビザですか?
Bさん:  はい、これはビザです。

最初の文(Aさんの部分)が疑問文です。文末に「?」がついているので疑問文であることがわかります。発音のリンクをクリックして発音を聞き、文末の音調が上がっていることを確認して下さい

音調の上がり方について、一つ注意しておきたいのは、基本的には、疑問のポイントとなる単語が本来持つアクセント位置以降の音調が上がるということです。文末の音調を上げるというと、英語学習の経験者は、文末の単語の、最後の音節の音調を上げると考えがちですが、ロシア語の疑問文の場合、キーとなる単語全体の音調が上がる感じになる場合もあるので注意が必要です

もう一つ、別の例を見ておきましょう。

Aさん: Он студент?
Bさん:  Да, он студент.
発音

Aさん: 彼は学生ですか?
Bさん:  はい、彼は学生です。

「он」は、「彼は」という意味の人称代名詞です。「студент」は「学生(男子の学生)」という意味の男性名詞です。上記の疑問文では、「студент」の「е」を境に音調が上がります。発音をよく聞いて確認してください。



次に疑問詞を用いた疑問文を見てみましょう。

Aさん: Кто это?
Bさん:  Это Володя.
発音

Aさん: あれはどなたですか?
Bさん:  あれはヴァロージャです。

「кто」は「誰か」を問うための疑問詞です。ロシア語は、語形の変化によって各単語の文法上の役割を明確化できるため、語順の制限が比較的緩やかな言語です。しかし、それでも「自然な語順」というものが存在します。疑問詞(кто、誰)をетоに繋げて疑問文を作る場合、「疑問詞+ето」が自然な語順です。кто以外にも、「何」を表す疑問詞「что」を使って、「これはなんですか?」と問う場合も、「疑問詞+ето」にしたがって、「Что ето?」という並べるのが自然な語順です

発音についての注意ですが、先に紹介した「代名詞と名詞を並べた文章を疑問文にする場合」と異なり、疑問詞を使った疑問文の発音では、文末の音調は上がりません。これは、疑問詞を使っている場合は、音調を上げなくても疑問文であることが判別できるためです。リンク先の発音を聞いて、文末の音調が上がらないことを確認して下さい。



次に、「これはビザですか?」と問われて、否定する場合の答え方を見てみましょう。

Aさん: Это Виза?
Bさん:  Нет, это не виза.
発音

Aさん: これはビザですか?
Bさん:  いいえ、これはビザではありません。

上述のように、「Это Виза?」は、疑問詞を伴わない疑問文なので、発音するときは文末の音調を上げます。否定文では、否定される語の前に「не」を置きます。неは否定される語と隙間なく連続的に発音されますので最初は聞き取り辛いかもしれません。繰り返し発音を聞いてнеが入る場合の発音の違いを区別できるようにしましょう。



最後に、名詞を2つ続けて「AはBである」という言い方を見てみましょう。このような場合は、2つの名詞をダッシュ「」でつなげます。

Москва ― столица РФ
発音

モスクワはロシア連邦の首都です。

上述のように、ロシア語では、英語のbe動詞の様に、二つの名詞をつなげて「AはBである」と表すことは通常は行いません。ただし、言葉を定義する場合や、慣用的な表現において、例外的に「です、ます」を表す単語「есть」を用いる場合があります。例えば以下のような場合です。

Физика есть наука.
発音

物理学は科学である。


Работа есть работа.
発音

仕事は仕事だ。



【第3回】 人称代名詞
【第1回】 名詞の性